日本には、貧富の差に関係なく、誰でも医療機関を受診できるという、世界に誇れる
医療保険制度があります。
国民皆保険(こくみんかいほけん)はWHO(世界保健機関)から、健康の到達度と均一性、
費用負担の公正さなどを理由に高い評価を受けています。
イギリスの医学誌『THE LANCET』で2011年「国民皆保険達成から50年」と題する特集号で「短期間で世界一の長寿国となり、高い健康水準を実現」、「国民皆保険で公正でアクセスしやすい医療を実現」「先進国の中には低い医療費でこれを達成したこと」等を挙げて高い評価をしています。
そのため日本のこの制度を学び導入しようとしている国々(セネガル、フィリピン、ベトナム)も多くあります。
「世界有数の長寿国を実現」
日本では公的医療保険などの優れた制度や仕組みによって、国民皆保険導入前の1960年に、女性が約70歳、男性約65歳であった日本人の平均寿命は、大幅に伸び63年以上経った2023年5月19日にWHOが発表した2023年版の世界保健統計によると、平均寿命が最も長い国は日本84.3歳だった。 2位はスイス83.4歳で日本と約1歳の差がある。
「国民皆保険の歴史」
「国民皆保険」は半世紀以上前の1961年に始まりました。
国民皆保険が実現する前には、医療を受けられずに亡くなる人も大勢いました。
1956年の『厚生白書』のは「1,000万人近くの低所得者層が復興の背後に取り残されている」と記されています。
この頃までは、国民のおよそ3分の1にあたる約3,000万人が公的保険に未加入であり、「国民皆保険」が完成することになったのです。
「国民皆保険とともに高度経済成長期へ」
国民皆保険の成立により、新生児や乳児、高齢者の受診が増え、現役世代も安心して働くことができるようになりました。 そのおかげで、日本は経済成長を成し遂げ世界有数の経済大国になりました。
「国民皆保険制度が破綻寸前」
国民皆保険制度は日本の誇る財産だ。
ところが、このまま何もしなければ、破綻するのは時間の問題だ。
「いまの日本は世界最高の高齢者率」
国民皆保険制度が実現した1961年当時の高齢化率(65歳以上の人口の割合を示す高齢化率)は5.8%だった。
国民皆保険制度は、年金と同じ、高齢世代の医療費を現役世代が負担する賦課方式だ。
当時は現役世代17人で1人の高齢者の医療費を負担していた。
ところが、総務省が2023年4月に発表した、2022年10月1日時点での高齢化率は29%で過去最高である。 2065年には38%を超えると予測されている。
本来、保険システムは維持給付レベルとバランスで決まる。
社会が高齢化すれば医療需要は増す。 給付レベルを下げるか、負担を増やすしかない。
日本では、このことがずっと議論されてきた。
医療費が足りなくなると、税金で補填してきたからだ。
現在、医療費負担に占める保険料は5割で3割以上が公費つまり税金だ。 税金が足りなくなれば政府は赤字国債を出してきたが、2023年3月末現在の赤字国債は1,270兆余だ。
ただ、これも限界。 国民皆保険制度を守りたければ給付を抑制し患者負担を上げるしかない。
「日本の人口推移」
2065年には9,000万人を割り込むと推測されています。
かたや、2065年での15歳~64歳の生産人口割合は51.4%。
合計特殊出生率2020年は1.34%ですが、厚生労働省の人口動態統計の2020年以降は1.44%と試算されている。 因みに、2022年の出生率は1.26%でした。
尚、現状維持をする為の出生率は2.07%です。
国が異次元のこども対策・子育て支援費として3.5兆円と目論んでいますが、財源は先送りです。
「2040年問題」
日本の少子により、社会保障制度の増大や労働力不足などが懸念される2025年問題が目前に迫っています。
昨今はさらに状況が深刻化する「2040年」が注目を集めています。
「2040年問題とは」日本の人口減少と少子高齢化が進行することにより、2040年に顕著に表面化するさまざまな社会問題の総称です。
人口推計の数値をもとに、2040年にどのような問題が起こりうるか見ていきます。
●超高齢化社会
2022年11月時点 | 2025年推計 | 2040年推計 | |
総人口 | 1億2485万人 | 1億2254万人 | 1億1092万人 |
生産年齢(15歳~64歳) | 7,412万人 59.4% | 7,170万人 58.5% | 5,978万人 53.9% |
65歳以上人口割合 | 3,625万人 29.0% | 3,677万人 30.0% | 3,921万人 35,3% |
75歳以上人口割合 | 1,946万人 15.6% | 2,180万人 17.8% | 2,239万人 20.2% |
令和4.11.21総務省統計局
日本将来推計人口(平成29年推計)結果報告書より
WHOの定義では、65歳以上の人口が総人口の21%を超える社会は「超高齢化社会」となっています。
日本ではすでに超高齢化社会なのですが、2040年になると65歳以上の人口35.3%、75歳以上の人口が20.2%となり、高齢者数のピークを未知の領域に突入します。
では具体的に2040年にどのような問題が起こりうるのか見ていきす。
●社会保障制度の危機
まず、若者が高齢者を支える、現行の社会保障制度を続けることは厳しくなります。
社会保障を支えている「生産年齢」が2025年推計では7,170万人で全人口の58.5%が
2040年推計5,978万人で53.9%減少傾向が予測される。
「85歳以上の人口の増加、死亡数の増加が見込まれる」
2035年までは85歳以上の人口の大幅な増加が続くことがわかる。
85歳以上の人口の全人口に占める割合は1990年においては1%に満たなかったが、2019年においては4.7%、2040年には9.2%に達する。
社会保障を支える人口が減り、高齢者人口が増え医療費を押し上げることが推測される。
一方、死亡数は年々増加しており、2040年には1989(平成元年)年(約168万人:1日当り約2,200人)の2倍を超える水準(約168万人:1日当り約
4,600人)になると見込まれている。
高齢化の進行が一段落する中においても、今後の医療・介護の在り方との関連の深いこうした見通しには留意が必要である。
●2025年は「社会保障費不足」、2040年は「持続可能性」が大きな問題に!
2025年問題では社会保障費の「不足」が大きな問題ですが、2040年問題では社会保障制度の持続可能性つまり「継続自体」が危ぶまれています。
解決するためには「社会保障費の給付と負担の見直し」などの抜本的な改革、健康寿命の延伸、医療・介護サービスの生産性向上などが必要であると言われています。
今後、国は持続可能な社会保障制度改革を推し進めるにおいても、2040年を視野に行財政改革を進めるものと思われる。