令和3年医療施設調査(厚生労働省)によると現在、全国では、104,292軒の医科クリニックと67,899軒の歯科クリニックがあります。

今回は、クリニックの新規開業の開業場所の決定について考察してみます。

今の時代、WEB環境が大きく変わり物理的な距離は関係なくなっているネットビジネスも出ていますが、リアルの世界で事業の成功に業種を問わず、立地条件は大きな要素のひとつです。

 クリニックの新規開業の形態として、 建築面から、①戸建て、②ビル診療(テナント)の二つに分類できます。この選択は、診療科目や都市部か地方かによりも変わりますが多くの場合、投資できる資金から決定されることになります。

 たとえば整形外科、リハビリテーション科を標ぼうするクリニックでは、リハビリ機器が多く診療報酬上の施設基準の面からも広い面積を必要とすることがあります。この場合、ビル診療所として大きな面積の建築物件が開業時期にあるかということから戸建ての整形外科クリニックが多いように思います。

 一方、最近増えている心療内科(いわゆるメンタルクリニック)では、他の科目に比べ面積が狭くても開業が可能です。またロケーションからみても都市部で駅前やビジネス街に多くあります。この場合の場所は、土地も高く、あらたに戸建てを建築できる場所も少なく、その結果ビル診療が多い傾向があります。

 また駅前、ビジネス街は昼間人口が多く美容外科や大手医療法人の分院(サテライトクリニック)や特徴ある専門外来クリニックなども存在しています。

 診療科目で一番多い内科では、専門分野によりレントゲン装置の有無により建築面積が異なります。この場合に建築的には戸建て、テナントビルの両方があります。

 内科で開業候補地を見てみますと、開業前では、目立つメイン道路に面した場所、出身地、現在の勤務病院の付近など希望されますが、そこにはすでにクリニックが現存しているケースが多く、あらたな開業候補地がなかなか見つからないという現実があります。 

 また建物以外に駐車場の確保も含めて開業地を探すことも忘れてはなりません。

都市部(ビジネス街)では、公共交通機関が近隣にあれば駐車場なしの医療機関、またはコインパーキング等の駐車代を一部負担されている医療機関もあります。

 

 では開業されている医師の方々は、どのように開業地を決定されたのでしょうか。

何らかの理由で候補地がみつかると、推計患者数を算出する「診療圏調査」を参考にされて、その他の条件を加味して決定されています。

 なかには、開業地を探し出して経過年数がかかっておられる医師の方もおられます。

そのような医師の方は、不動産案件が出てくると、即時に診療圏調査をして、その結果の推計患者数に着目し、現地を見ることもなく次々と渡り歩いている方。

 その逆に、不動産がでてきてから検討時間が長すぎ、案件が他の方に決定された。

というタイミングを逃してしまっているケースも散見いたします。

冒頭でも記載したように、既存クリニックがあるなかでの開業なので、条件の良いところにはクリニックがあるもの。と割り切っていただき診療圏調査の結果をうのみにせず、不動産案件ができてきたらここで開業するにはどのようにすればよいかを一考してください。

そしてご自身の足で現地付近を歩いてみてください。

 また不動産は一つしか無い物 タイミングを逃すとほかの方(医師とは限らず)に取られてしまう。ということにならないように、資金面やどのような開業をしたいかを前もってラフプランを策定しつつ不動産情報を集めてみてはいかがでしょうか。

 そして候補地を、「自宅から通えればどこでも」と言われる医師の方もいらっしゃいますが、私に知っている成功されている医師の方は、ある程度の地区限定し、周囲の医療機関の状況も把握し予算にあった案件を探していると好立地が紹介され開業できた事例もあります。

 では、どのように地区を決めるか、たとえば都市部の周辺では、「市街化調整区域」を狙うことも一方法です。

市街化調整区域の場合は、そもそも原則として建物の建築は許されていませんが、クリニックは、診療所として都市計画法第34条に記載されているため、市街化調整区域であっても建築することが可能です。

 しかし、インフラが整っていない場合もあり、土地探しには、専門家に依頼し、間違いない案件を入手のタイミングをはずさない諸々の準備をしてください。