かかりつけ医制度とは、特定の医療機関(かかりつけ医)を定期的に受診することによって、その医療機関を中心として健康管理や医療サービスを受ける仕組みのことを指します。主に日本の医療制度において用いられる概念です。23年7月に中部医業(クリニック)経営サポートが実施したセミナーの内容を一部抜粋してお知らせいたします。

かかりつけ医制度の目的は、患者の健康管理を一元化し、健康上の問題を早期に発見・対応することで予防医療や連携した治療を行うことにあります。また、かかりつけ医は患者の健康状態や治療歴を把握しているため、病気の診断や治療においてもより適切な判断ができるとされています。

かかりつけ医制度は日本の医療保険制度において重要な役割を果たしており、健康診断や慢性疾患の管理などにおいて、患者と医療機関との連携を強化することを目指しています。かかりつけ医制度によって、総合的な医療サービスの提供と健康管理の向上が図られることが期待されています。

かかりつけ医制度の問題点

かかりつけ医制度にはいくつかの問題点があります。以下に主な問題点を挙げてみます。

  1. かかりつけ医の確保とアクセスの問題: 特に地方や人口の少ない地域では、かかりつけ医を見つけることが難しい場合があります。また、混雑している医療機関では新規患者の受け入れが難しいこともあります。
  2. 立地による医療格差: 都市部と地方との間で医療格差が生じる可能性があります。都市部では多くの医療機関が集中しているため選択肢が豊富ですが、地方ではかかりつけ医を選ぶ余地が限られる場合があります。
  3. 健康保険の適用範囲: かかりつけ医制度が適用される範囲には限りがあり、特定の慢性疾患や重度の病気を抱えている患者にとっては、専門医を受診したい場合もありますが、制度上はかかりつけ医に通わなければならないことがあります。
  4. 連携の不十分: かかりつけ医と専門医や他の医療機関との連携が不十分な場合があります。情報の共有や連携の強化が必要ですが、その実現には様々な問題があるため、円滑な連携が困難となることがあります。
  5. 人材不足と時間の制約: 医療機関の人材不足や医師の労働時間の制約により、かかりつけ医の診療時間や受付可能な患者数に限りがあります。これによって、患者が待ち時間が長くなったり、連続した診療を受けることが難しい場合もあります。

これらの問題点を解決するためには、医療制度の改革や医療機関の効率化、地域における医療インフラの強化、情報技術の活用などが検討されています。かかりつけ医制度の改善によって、より良い医療サービスと健康管理が提供されることが期待されています。

かかりつけ医制度に対する意見

賛成意見: かかりつけ医制度によって、患者と医師の信頼関係を築くことができ、健康管理や予防医療においてより効果的なサポートが可能となるという点で、医師から賛成の意見が出されることがあります。

反対意見: かかりつけ医制度は、特定の医療機関に患者を固定することになるため、患者の自由な医療機関の選択が制約されるという懸念があります。また、かかりつけ医の確保やアクセスの問題、連携の不十分などの課題も指摘されることがあります。

クリニック(診療所)が準備すべきこと

かかりつけ医制度を運営するために、診療所は適切な体制を整える必要があります。以下は、かかりつけ医制度において診療所が準備すべき主な体制についての一般的な指針です。

  1. 医師とスタッフの配置: 診療所は、かかりつけ医として患者を受け入れるために、医師を適切な数配置する必要があります。また、看護師や受付スタッフなどの適切なスタッフ配置も重要です。患者の受け入れと健康管理に対応するため、診療所の規模や患者のニーズに応じて適切な人員を配置します。
  2. 診療の多角化: かかりつけ医制度では、患者の健康管理や予防医療に重点を置く必要があります。そのため、一般的な内科診療に加えて、健康診断、生活習慣の指導、予防接種など、幅広い診療領域をカバーすることが望まれます。
  3. 健康情報管理の整備: かかりつけ医制度では、患者の健康情報を一元的に管理する必要があります。電子カルテや情報システムの導入によって、患者の診療履歴や検査結果、アレルギーや薬剤情報などを効率的に管理し、医師が適切な診断や治療を行えるようにします。
  4. 予約システムと受付の改善: 患者がスムーズに診療所を利用できるよう、予約システムの導入や受付の効率化を図ります。待ち時間の短縮や混雑回避のために、予約制を導入するなど、患者の利便性を向上させます。
  5. 連携体制の強化: かかりつけ医は患者の健康を総合的に管理する役割を果たすため、専門医や他の医療機関との連携が重要です。リファーラルシステムやコンサルテーションの機会を設けることで、連携を円滑に行えるようにします。
  6. 健康教育と啓発活動: 患者に健康への意識を高めてもらうために、定期的な健康教育や啓発活動を実施します。生活習慣改善や予防医療の重要性を広く理解してもらうことで、患者の健康管理が向上します。

これらの体制を整えることで、診療所はかかりつけ医制度において、患者の健康管理と連携した医療サービスの提供を効果的に行うことができるでしょう。

かかりつけ医制度に関する詳しい内容はこちら

https://igyo-support.com/news/2023%e5%b9%b47%e6%9c%88%e6%97%a518%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%ae%e3%82%bb%e3%83%9f%e3%83%8a%ef%bc%8d%e5%8b%95%e7%94%bb%e3%82%92%e3%82%a2%e3%83%83%e3%83%97%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%e3%80%82/