ジェネリック医薬品の導入目的と現状の課題について

国は後発医薬品の※使用割合の目標について、後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保を柱とし、官民一体で製造管理体制強化や製造所への監督の厳格化、市場流通品の品質確認検査などの取り組みを進めるとともに、後発品の数量シェアを、2023年度までに全ての都道府県で80%以上とする目標を決定した。

「経済財政運営と改革基本方針2021」(R3.6.18閣議決定)

※「使用割合」とは後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品のある先発医薬品及び後発品を使う割合をいう。

【なぜ後発品促進するのか】

 後発医薬品(ジェネリック医薬品)は先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売が承認され、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。

後発医薬品を普及させることは、患者負担の軽減や医療保険財政に資するためとあります。

また、厚生労働省は平成25年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し取り組みを進めてきました。

更に、平成27年6月の閣議決定において、2017年(平成29年度)に70%以上とするとともに、2018年度(平成30年度)から2020年度(令和2年度)末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする目標を掲げましたがクリアしていません。

この80%目標の達成時期を2021年(令和3年)6月の閣議決定において、「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする新たな目標が定められました。

【後発品促進の真の目的は】

  国は「患者負担の軽減や医療保険財政」にしする為にと明記していますが、最大の理由は「医療費の抑制の一つ」です。

 過去3年の国民医療費とその伸び率

令和元年 43.6兆円(2,4%)

令和2年 42.2兆円(▲3.1%)

令和3年 44.2兆円(4.6%)

2025年から2040年にかけては、団塊の世代が75才から85才以上に移行する過程で疾病のリスクも高まっていく。

また、2042年には65才以上の人口が3,878万人ピークとなり、総人口の36.8%を占める。

一方で、出生数は長期的に減少トレンドが続いており、人口減少に歯止めがかからない状況となっています。

この傾向人口減少に変化がない限り、担い手側の分母が大きくなることは期待出来ない。

今後は、働き方の改革などによって元気な高齢者が担い手側に加われるよう、支援体制の構築を社会全体で考えていく事が必要である。

では、人口減少傾向が続くなか、国の財政状況はどうなっているのか

【財政収支】

 国の一般会計の財政収支赤字

 ・令和3年28.9兆円

 ・令和4年21.3兆円

 ・令和5年17.1兆円

 ここ数年一般会計が100兆円を超え、令和5年度の一般会計予算は過去最大の114.4兆円を計上した。

国債の発行も35.6兆円と相変わらずの赤字国債にたよっている。

特に、令和5年度の一般会計の予算は、年金、医療費等の社会保障伸びに加えて、防衛予算の大幅増額が重くのしかかる。

他方欧米各国のジェネリック医薬品の状況はどうであろうか

【2021年各国のジェネリック医薬品の数量シェア】

日本アメリカドイツイギリスイタリアフランススペイン
71.5%96.1%89.6%81.2%61.7%77.7%63.8%

アメリカ、イギリスは日本よりもジェネリック医薬品が広く普及している。

【ジェネリック医薬品の課題】

 『安定供給』

  • 品切れ品目発生時メーカーの対応

後発メーカーのでは「厚生労働省医政局経済課に報告」が95.2%で最も多く、次いで「原因を究明し再発防止をとった」(76.2%)

「同一含有規格品の製造販売業者に協力を要請」、「先発医薬品の製造販売業者に協力を要請」(それぞれ54%)した。

  • 薬価削除した後発医薬品の品目数

・平成28年度に薬価削除した後発医薬品の品目数は207品目であり、このうち、

販売中止3ヶ月前までにすべての納入先保険医療機関等に直接通知できたのは185品目であった。

・薬価収載後5年以内に薬価削除した品目数は13品目であった。

 その理由としては、「他社製品が多数あったため」とある。

  • 一般的名称への切り替え推進

医療用医薬品の薬価収載には、銘柄別薬価収載と一般名収載がある。

銘柄別収載とは、商品の名前(ブランド名)で収載する。

一般名収載とは主にその薬剤の成分をそのまま一般名で薬価収載すること。

「何が違うのか」

 薬の処方権は医師にあり薬を処方する際、ブランド名(商品名)での処方箋はそのブランド名の薬を調剤しなくてはならない。

片や、医師が一般名での処方箋では、ジェネリック医薬品のメーカーは一般名薬価収載が多いため、どこのジェネリック医薬品のメーカーでも調剤することができる。

従って、A社が製造中止や、原末の輸入遅延に因る品切れ等が発生しても、他のB社、C社のジェネリックメーカーの薬剤で調剤することが可能となる。

『一般的名称の切り替え推進状況』

・一般的名称への切り替えを計画している後発医薬品は661目であり、ブランド名を販売名としている後発医薬品のうち44.7%にあたる。

・平成27年度と比較すると、切り替えを計画している品目数は大幅に増加した。

・一般的名称に切り替えの予定がない品目は652品目で、44,1%にあたる。

 切り替えない理由としては、「薬価削除、製造販売の中止を予定しているから」(44.4%)、「ブランド名が定着しているから」(41,1%)、「販売名の切り替えによって医療現場が混乱する可能性があるから」(34.4%)であった。

  • 供給体制について

・品質、供給能力、価格等における問題のない原薬ソースの確保。

・委託生産及び従業員の確保を含めた安定供給のための生産体制の整備。

・数量シェア80%シャアを達成するために、安定供給、品質に対する信頼性の確保、

情報提供等において、人的、物的投資の継続が必要であり、資金の確保が重要な

課題である。

後発品使用促進に向けて、病院、診療所、調剤薬局が後発医薬品メーカーに望むこと

『病院』

 ・後発医薬品メーカーに最も望むこととして、「供給停止をしないこと」(42.1%)が

最も多く、次いで「品切れが発生しないこと」(22.3%)となっており、安定供給に

関する内容であった。

『診療所』

 ・後発医薬品メーカー最も望むこととして、「後発医薬品の品質情報を公開・提供

していること」(24.4%)が最も多く、次いで「供給停止をしないこと」(17.6%)であった。

『保険薬局』

 ・後発医薬品メーカー最も望むこととして「品切れが発生しないこと」(32.1%)が

最も多く、次いで、「供給停止しないこと」(30.1%)であった。

 国がジェネリック医薬品を使用促進に動いたのは、税収が伸びない中、社会保障制度とりわけ医療費が毎年1兆円増えている。

この先、2025年には団塊世代が後期高齢者となり、2040年には団塊世代ジュニアが65才、その2年後の2042年には65才以上の人口がピークになる、実に人口の36.8%

が高齢者だ。

 医療費の伸びを抑えるために現在、色々な制度改正が進んでいる。

病院機能の役割分担を決める「地域医療構想」、住み慣れた地域で、医療と介護の連携を推進し、提供体制を一体的に整備する「地域包括ケアシステム」。

 ジェネリック医薬品数量シェア80%はほぼ達成され、地域医療構想、地域包括ケアシステム等、今後も医療費抑制策を打ち出してくる事は間違いない。

 今般、ジェネリック医薬品の使用促進せざるをえない状況と、現状の課題について語らせていただいた。

日本が世界に誇る「国民皆保険制度」維持するためには、避けてとうれない問題であり、

今後、少子高齢化と生産人口の減少による、医療費財源問題含め、患者の受益者負担が更に高まるものと思われる。

 

  • 自己負担の少ない患者への対応

・医療福祉費受給については医療費がかからないことから、患者は先発医薬品の調剤を希望する傾向にある。

・小児・児童のジェネリック医薬品の使用割合が低い。

 小児等では医療費の窓口無償化が図られており、薬価差に関しがなく、医療保険制度の圧迫を意識していない可能性がある。

・後発医薬品に切り替えても経済的インセンティブが働かない患者への対応。

 公費負担制度の中で、患者負担が増加する患者への対応。

・医療費の自己負担がない小児・児童や生活保護受給者に対する参照価格制度の導入が有効と考える。