愛知県の医療機関は、令和5年1月1日現在 保険医療機関として病院(317軒)、医科診療所(4,742軒)、歯科診療所(3,678軒)あります。

 ここでは、愛知県の開業事情について記載いたします。

愛知県では、勤務医がクリニックを開業する場合には個人開設を原則としています。

つまり勤務医がいきなり法人を立ち上げて開業することはないという現状があります。

他都道府県では、行政の解釈が異なるケースもありますし、諸々の法律により取り決めもありますので開業企画段階からご注意ください。たとえば医療法、建築基準法、労働基準法、など多岐にわたります。

東海地区の開業形態として首都圏と関西圏に比べ、テナント開業より戸建て開業が多い。

そのためクリニック面積も広い傾向があり、CTやMRIを保有するケースもあり、建築費用、医療機器などの投資が高額になりますが、銀行融資などでは、名古屋金利とよばれる名古屋経済圏で全国の平均貸出金利を大きく下回る低金利融資が新型コロナ禍となる前にはありましたが、昨今は融資も厳しくなっています。

また、自動車での通院が多く駐車スペースの確保も検討しておく必要が多く、名古屋市内などでは、空き地が少なく駐車場の確保の有無で開業予定地が決定されるケースも出てきています。

そのような背景もあり、最近はドラッグストアを含む調剤薬局主導やスーパーマーケットなどの商業施設内や近接の医療モール(医療ビレッジ)での開業もでてきています。

そのようなケースでは、土地に関して定期借地権やテナント入居として初期投資金額を少なくできるメリットもありますし、新規クリニックを認知していただく好立地であることが多くなっています。

患者視点で考えてみると診療が終わり院外処方せんを薬局へ渡し隣接スーパーなどで買い物後に投薬を受け取るという事も出来ます。

「医科」と「歯科」について

『医科』と『歯科』では、免許を取得後、開業までの勤め方が大きく違っています。

医科では、大学卒業後、病院勤務から開業が多く。最近では在宅専門の勤務医から独立などあらたな開業パターンもでてきています。

『歯科医師』は、大学を卒業後、病院での勤務するケースは限られ、診療所勤務のなることが多く、令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計 』では、全国の歯科医の88.1%が診療所で勤めています。

 「歯科診療所」は、『令和2(2020)年医療施設調査』では、全国で67,874軒であり。歯科医師数(107,443 人)と比較すると開業希望歯科医が開業場所を探すことが難しいとも言えます。実際、開業相談では歯科医は新規の開業より第三者承継を希望されることも経験しています。

医科の医師では、『令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計 』では、全国の医師(339,623人)の31.6%が診療所(107,226人)で勤めています。歯科に比べ医科は診療科目も種々あり開業場所もまだ選択の余地はありますが承継開業を希望されるケースも増えています。

承継開業について

承継開業は、医科・歯科を問わず受診中の患者様がいるので経営的に予測がつくことがメリットとしてあげられます。しかし承継する建物の築年数やバリヤーフリーの有無など現在の開業スタイルにマッチできているかなど、開業にあたり修繕や改修にコストがかかる場合もあり『開業コストが少なくなる』と一概には言えないケースもあります。

また引き継ぐタイミングによっては、休診期間があり患者様の引継ぎに中断があると承継効果が少なくケースや引き渡す前の来院患者数や数年前からの患者数の推移、診療内容などの確認すべき事項は多岐に渡ります。

不動産に関する賃貸事項で注意が必要なことに、前経営者(前院長)と地主やテナント所有者との契約があります。

たとえば定期借地権で前の院長が契約、その場合の残りの契約年数は何年か?

テナントなら契約に個人経営はよいが法人は認めないなど。

そのほか従業員の雇用について、診療報酬について、患者情報の個人情報の取り扱いなど諸々と検討事項があります。

承継開業後に当初想定していない事項でトラブルにならないように、親しい関係者であっても書面で覚書や契約書にしておくことをお勧めしています。

また紙カルテから電子カルテへ移行やプライバシーに配慮した個室化など時代にマッチしたクリニック経営も重要になっており予約診療の導入やホームページ等の情報発信も大切になっています。

ポストコロナの開業について

令和2年1月に始まった新型コロナ禍は、受診行動の変化やオンライン診療などは医療機関にとって誰も経験をしたことのない状況でした。一時受診抑制もありましたが元に戻りかけた時点での第2類から第5類感染症へ5月8日から変わります。

またオンライン資格確認など医療のDX化は、クリニックの経営にも、受診する患者にも大きく影響を与えていくことは明白な事実です。

建築費用の高騰などの開業費用のアップに対し国民医療費削減の政策。

令和6年度4月の診療・介護・障害のトリプル報酬改定などに着目し、その地域にとって、

選ばれるクリニックを目指して、しっかりと開業準備をしてください。